『葵上』を鑑賞する

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その二 六条御息所の生霊登場

能(喜多流)『葵上』
平成12年3月11日 国立能楽堂
〔シテ〕塩津哲生 〔ツレ〕大島輝久 〔ワキツレ〕山本順三

朱雀院の臣下[ワキツレ]が登場し、光源氏の正妻葵上が正体不明の物怪にとりつかれ、一向に回復しないので、照日の巫女[ツレ]を招き、物怪の正体を占わせるのだと説明します。巫女が梓弓を鳴らし、清めの詞を唱え、霊魂を呼び寄せる歌を謡うと、六条御息所 [前シテ]が幕から現れます。御息所は葵上との車争いで負けた過去を思い出してさめざめと泣きます。その嘆きから巫女は物怪の正体を察し、「もしかやうの人にてもや候(そうろ)ふらん」―ひょっとしたらこのような人でいらっしゃるでしょうか―と臣下に教えます。臣下から名を名乗るようにうながされた御息所は、「これは六条御息所の怨霊なり」と正体を明かすと、花やかな昔の生活をしのび、抑えていた恨みのために心ならずも生霊として現れてしまった我が身を恥じ、嘆きます。


御息所の生霊の姿は、臣下には見えず、霊力のある巫女にだけ見えているという設定です。つまりわたしたち観客は、巫女が見ている光景を目にしているのです。御息所が静かに舞台に現れ、せつせつと内に秘めた恨みと悲しみを語るこの場面は、生霊の恐ろしさと同時に哀れさも感じられます。

  • 梓弓
  • 特殊演出
  • 詞章
その一


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