唐土(もろこし・中国)の王朝・大明国(たいみんこく)が滅ぼされたことを受けて、かつての明の忠臣・鄭芝龍(ていしりゅう)と日本人の妻との間に生まれた和藤内(わとうない)が、唐土に渡って国性爺鄭成功(こくせんやていせいこう)と名を改め、明国再興のため活躍するという壮大な物語です。
明の忠臣であった鄭芝龍は、李蹈天の悪計で国を追われて日本に亡命し、老一官(ろういっかん)と名乗っています。老一官と日本人の妻との間に生まれた息子・和藤内は、漁師をしながらも、軍法を学んでいました。ある日、浜辺にいた和藤内の元に、栴檀皇女を乗せた船が漂着します。事情を聞いた和藤内は、明の再興のため、父母と共に唐土へ渡ります。
〈大明御殿の段・大明御殿奥殿の段・芦辺の段〉
親子3人は甘輝の館に到着しますが、甘輝は外出中で、中に入れてもらえません。錦祥女は、門の上から父・老一官と対面し、再会を喜びます。和藤内の母は、自分が縄をかけられ、捕われの身となって城の中に入り、甘輝の帰りを待つことを提案。これを聞き入れた錦祥女は、夫が味方に付けば白粉(おしろい)を、付かないなら紅粉(べに)を、城内から外へと続く水路に流して知らせると、和藤内に約束します。
帰館して話を聞いた甘輝は、突然妻の錦祥女を刺し殺そうとします。驚く母に、一旦韃靼国の将軍になりながら、妻の縁で和藤内に味方すると思われては武将の恥、そのため妻を殺した上で味方すると説明。これを聞き、進んで殺されようとする錦祥女ですが、縛られて手の使えない母は、甘輝と錦祥女の袖を口でくわえて何とか引き留めます。母の嘆きに、甘輝は和藤内の味方になることを断念。錦祥女は水路に紅粉を流します。
紅粉を見て城内に乗り込んできた和藤内が、あわや甘輝と対決という時、錦祥女は、剣の刺さった自らの胸元を皆に見せます。錦祥女は夫が和藤内に味方できるよう、自害したのです。水路に流した紅粉は、錦祥女の血だったのでした。これを受け、甘輝は和藤内の名を、唐土風に国性爺鄭成功と改め、味方になると約束。喜ぶ母は、娘を1人で死なせまいと自害し、錦祥女と共に息を引き取ります。
〈楼門の段・甘輝館の段・紅流しより獅子が城の段〉