主要作品紹介

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主要作品紹介 【しゅっせかげきよ】

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近松が人間性豊かに描いた阿古屋

コラム

近松の書いた「悲劇」
  •  『出世景清』は、日本ではじめての本格的な長編悲劇であると言われています。近世における「悲劇」の誕生は、近松の偉大な功績として高い評価を受けています。
  •  現在では、不幸なことや、悲惨なことを指して「悲劇」という言葉が使われがちです。しかし本来の演劇の世界では、過酷な運命に対し、主人公が悩み、傷つきながらも、自ら行くべき道を選ぶ劇を「悲劇」と呼んでいます。
  •  近松は、景清を主人公とした、いくつかの物語を下敷きに本作品を執筆しましたが、元になったそれらの物語に、『出世景清』のような悲劇性はありませんでした。古浄瑠璃(こじょうるり・義太夫節誕生以前の浄瑠璃)『かげきよ』などで、阿古屋(あこや)にあたる女性は、恩賞に目がくらみ、進んで景清を鎌倉幕府に訴える悪女として書かれています。
  •  『出世景清』でも、阿古屋が景清の訴人(そにん)に加担してしまう筋立て自体は、古浄瑠璃などと同じです。しかし、近松は阿古屋を、単なる悪人とはしませんでした。近松は阿古屋の心が、景清への愛と嫉妬で揺れ動くさまを丁寧に描写します。そして、最後には罪を償(つぐな)うため命を絶つことを選ぶ、人間性豊かな女性に描き直しました。このように、近松によって登場人物の苦悩や葛藤が描写されたことで、『出世景清』はこれまでにない悲劇性を獲得したのです。

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