歌舞伎舞踊を彩る要素
小道具の表現
歌舞伎舞踊で演者が手にして使うものを小道具といい、作品によって使う小道具が決まっています。
■傘や笠は男女を問わず使い、雨天時の外出や旅の風景を描く場面に用いられます。
■扇はほとんどの作品で用いられ、種類も数多く作られています。歌舞伎舞踊には欠かせない小道具です。扇はヒラヒラとさせて風や波を表現したり、盃や刀などの物にたとえて使ったりとシンプルながら幅広く描写を助けます。手拭いも、ヒラヒラと振って風や波などを表現する他に、クドキという女心を訴える場面などにも多く使われます。
■その他、奴(やっこ)の振る毛槍、からみの持つ花槍などの特殊な槍、立廻りに使う持ち枝や、楽器の役割も果たす羯鼓(かっこ)や鈴太鼓(すずだいこ)などがあり、歌舞伎舞踊のさまざまな役柄や局面を助けているのです。
これらの小道具は、役によってある程度の決まり事があり、基本的にはシンプルなものは庶民階級、装飾の多いものは上流階級の人々の使うものと考えられます。ただいずれの場合にも、リアルにその持ち物を写すのではなく、様式的な華やかさが加えられています。