用語事典

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悪玉踊り(あくだまおどり)

山東京伝(さんとうきょうでん)という人が、絵入りの本・黄表紙(きびょうし)に書いた踊りです。手や足をぶらぶらさせて鳶(とび)やからすの真似をしたり、手足の筋をつっぱらせたり、テンポをどんどん早くして踊ったりと、特に意味づけのない踊りをくりかえしていきます。

足拍子(あしびょうし)

足で舞台の板をトンと踏み鳴らすことをいいます。

当て振り(あてぶり)

歌や浄瑠璃の言葉をそのままに表現する振りのことです。例えば「山」という詞章では手で山の形を作り、「酒」ではお酌をして飲む動作をするなど、その形を直接的に表します。

海老反り(えびぞり)

両膝をつき、片手あるいは両手をかざしながら上体を大きく後ろに反らせる動作です。主に女方が圧倒的な力で責められる表現として用いられ、その柔軟性が美しさや儚さを醸し出します。

置(おき)

作品の最初の部分です。幕が開いてから人物が現れるまでの間に、その場面や人物の背景や状況を説明します。『供奴』、『越後獅子』のように「置」がない作品もあります。

踊り地(おどりじ)

それまでのストーリーから突然離れて華やかに踊る部分です。当時の流行歌が取り入れられることが多く、唐突な印象ですが理屈を超えた楽しさがあります。

頭(かしら)

鬘の名称です。「石橋物(しゃっきょうもの)」をはじめとする人間以外の主人公が、本性をあらわした時に用います。白・赤・茶・黒などがあり、毛が長いのが特徴です。

羯鼓(かっこ)

打楽器の1種です。鼓に似た形のものを胸の下あたりに付けて、撥(ばち)で打ち鳴らします。

からみ

「取巻(とりまき)」ともいいます。主役にからみ立廻りや所作ダテをします。人数は1人から10数人まで演目によって様々です。

義太夫(ぎだゆう)

竹本義太夫が創ったので義太夫といいます。人形浄瑠璃の音楽として発生し、歌舞伎に取り入れられた音楽です。太夫と呼ばれる語り手が情景や人物の心理を描き筋を運んでいきます。人物のせりふや心情を情感たっぷりに語るのが特色です。

狂乱物(きょうらんもの)

恋人や我が子を失うなどの大きな哀しみが元で気が狂った人物が、さまよい歩く姿を描いている作品です。狂乱は物狂いともいい、ものに狂った状態、強い一念が凝り固まって、心が正常でなくなってしまったことをいいます。笹や恋人の形見を持っているのが特徴です。

清元(きよもと)

高い声と繊細な節回しが、哀切感や色気をかもしだす音楽です。男性の高音と三味線の澄んだ音色が色っぽく、恋の思いを、美しく切なく描きます。その一方で粋で軽妙な作品もあります。江戸時代後期に豊後節(ぶんごぶし)から生まれました。

9代目市川團十郎(くだいめいちかわだんじゅうろう)

明治期の歌舞伎界の第一人者。演劇改良運動に意欲を燃やした名優です。『船弁慶』、『紅葉狩』、『素襖落』、『鏡獅子』を初演しました。

クドキ(くどき)

主に女の主人公が思いをかき口説く部分です。曲の中盤に位置し、しっとりとした音楽と共にその心を訴えます。『娘道成寺』の「恋の手習い……」が代表的です。

毛振り(けふり)

主に「石橋物(しゃっきょうもの)」の獅子が毛を振る動作をいいます。

毛槍(けやり)

槍の先端に鳥の羽毛などを付けたものです。振って広がった様が美しく、本来は大名行列の先頭に立って振り歩くものでした。

祭礼物(さいれいもの)

江戸時代の年中行事や祭礼を題材にしたものです。風俗舞踊に属します。

3代目瀬川菊之丞(さんだいめせがわきくのじょう)

明和から寛政年間(1764-1801)に活躍した女方の名優です。所作事の名人と言われました。『羽根の禿』、『女伊達』、『関の扉』を初演しました。

三番叟(さんばそう)

能楽の『翁(おきな)』を元にした舞踊です。神様が現れ、天下の平和や稲や麦などの豊作、子孫繁栄といった祝福をもたらす内容で、翁、千歳(せんざい)、三番叟の3役で踊られるのが基本のパターンです。

詞章(ししょう)

唄物と語り物の文章のことです。

7代目市川團十郎(しちだいめいちかわだんじゅうろう)

文化・文政年間から安政年間まで(1804-1860)活躍した名優です。『近江のお兼』を初演しました。

石橋物(しゃっきょうもの)

能の『石橋(しゃっきょう)』を元にした舞踊です。獅子物ともいいます。前後2段の構成で、後に獅子の姿になるのが特色です。

祝儀物(しゅうぎもの)

国の平和や子孫の繁栄、五穀豊穣を祝うおめでたい詞章で作られた曲の踊りです。華やかな扮装をして演じる作品もありますが、多くは一般的な紋付きの着物で踊る「素踊り」という形式です。

所作事(しょさごと)

所作とは「演技としての身ぶり」、「物真似的な身のこなし」のことで、この要素を持った舞踊を所作事といいます。

所作ダテ(しょさだて)

闘いの場面を流麗に見せる立廻りより、さらに音楽的・舞踊的要素が強くなったものです。

初代瀬川菊之丞(しょだいせがわきくのじょう)

享保から寛延年間(1716-1751)に活躍した女方の名優です。所作事の名人と言われました。

鈴太鼓(すずだいこ)

「振り鼓」ともいいます。太鼓をタンバリン状に押し潰した形で、中に鈴が入っていて、振ると軽やかな音が出ます。

曽我物(そがもの)

幼い頃から苦労を重ねた末に父の仇を討った、曽我十郎・五郎の物語を元にした舞踊です。鎌倉時代に起こったこの仇討ちが『曽我物語』として集大成され、それを題材にした作品が歌舞伎舞踊でも多く作られました。とりわけ男性の多い江戸の土地では勇猛なことが好まれ、荒々しい五郎を主人公とする作品が多く生まれました。

立廻り(たちまわり)

「殺陣(たて)」ともいいますが、時代劇の殺陣と違って、スローペースで展開されます。闘いの場面を流麗に見せるものです。さらに音楽的・舞踊的要素が強くなったものを所作ダテといいます。

中啓(ちゅうけい)

閉じた時に中開きになっている扇のことです。中啓(ちゅうけい)の「啓」という字には「ひらく」という意味があり、閉じても半分ほど開いているように見えるためこの名が付けられています。

チラシ(ちらし)

作品の最後の部分です。「踊り地」でいったん離れた本来のストーリーへ戻り、まとまりをつけて幕になります。

手踊り(ておどり)

扇や手拭いなどの小道具を持たずに、文字通り手だけを使った踊りです。通常は、それまでのストーリーから離れた、特に意味づけのない踊りが多くなっています。

出端(では)

人物が登場する部分です。単に「出(で)」とも言い、人物の特徴が述べられます。

道成寺物(どうじょうじもの)

紀州(今の和歌山県)の道成寺に伝わる伝説を取り入れた作品群です。その伝説は、女が自分から逃げる男をどこまでも追ううちに大蛇になり、道成寺の鐘に隠れた男を鐘もろともに焼き殺したというものです。

常磐津(ときわず)

スケールの大きいドラマ性のある舞踊劇を得意とし、人物のせりふや心情をスマートに語る音楽です。舞台上に出て語る「出語り(でがたり)」の形式で演奏されます。江戸時代初期に流行した豊後節(ぶんごぶし)から生まれた流れの1つです。

長唄(ながうた)

曲調は明るくリズミカルで、唄や三味線の他に大鼓(おおつづみ・おおかわ)・小鼓(こつづみ)・太鼓(たいこ)・笛といった大人数の編成が特徴です。歌舞伎の伴奏として発達してきたため、「花が美しい」「月が綺麗だ」といった風景描写を得意としています。

二段(にだん)

2段の階段のことです。幕切れなどに、女の主人公が見得を切る場合に用いられます。立役の場合は「三段(さんだん)」という3段の階段を用います。

二枚扇(にまいおうぎ)

2枚の扇を使った踊りです。

人形振り(にんぎょうぶり)

登場人物が人形のような身振りで踊ることです。人物が異常なほどに興奮した状態に陥った時に用いられ、その激しい思いを人形の動作で表現するものです。3人の人形遣いが動かす文楽(ぶんらく)という芸能の、人形の動きを誇張しています。

布晒し(ぬのさらし)

布を晒す風景を模したものです。白く長い布を振る部分をいいます。

引き抜き(ひきぬき)

舞台の上で瞬間的に衣裳を変える手法です。2枚の衣裳を重ねて縫い合わせ、その糸を抜いて上の衣裳を引っ張るとパッとはがれて、下の衣裳が現れるという仕掛けです。

一幕物(ひとまくもの)

舞台の幕を開けてから閉じるまでの一区切りの短い芝居のことです。

拍子舞(ひょうしまい)

小鼓の拍子に合わせ、または自分で歌いながら舞う部分です。

風俗舞踊(ふうぞくぶよう)

江戸時代の町に見られる物売りや大道芸人などの風俗や庶民の姿を描いた作品です。庶民のお祭りの様子を写した祭礼物も風俗舞踊の1分野です。江戸時代中期頃に生まれ、様々な市井の人物が描かれました。

双面物(ふたおもてもの)

「面」には顔という意味があり、双面物とはうり双つ(ふたつ)の人物が登場する作品です。恨みを持って死んだ男女の霊が合体し、恨んだ相手とそっくりの姿で現れます。

ぶっかえり

舞台の上で瞬間的に衣裳を変える手法です。それまで偽っていた姿から正体をあらわす時の演出です。肩の所の糸を引くと、外側に着ていた衣裳が前後に裏返って下半身を覆うように垂れ下がり、今まで内側に着ていた衣裳が現れる仕掛けです。

豊後節(ぶんごぶし)

江戸時代中期に、哀れさや色っぽさをもった語り口で大流行した音楽です。特に心中物を得意としましたが、その影響で実際の心中事件が多発したため、風紀を乱すとして禁止されました。後にこの流れを受けて、常磐津や清元が発生しました。

変化物、変化舞踊(へんげもの、へんげぶよう)

変化(へんげ)とは妖怪変化のことで、1人の演者が次々と扮装を変え、何役にも扮して踊る舞踊をいいます。元は神霊などの核となる役があり、それが悪人を困らせるために様々に姿を変える形式でしたが、時代と共に核となる役がなくなり、複数の俳優が交互に登場するレビュー式の舞踊も変化物といわれるようになりました。

松羽目物(まつばめもの)

能を元にした「能取り物」、狂言を元にした「狂言舞踊」の中で、舞台の正面に大きな松を描いた舞台装置「松の羽目板」を背景にして踊るものを「松羽目物」といいます。この装置は能舞台を真似たものです。幕末から明治にかけて多くの松羽目物が作られました。

見あらわし(みあらわし)

他の人物になりすましていた人物や妖怪などが、本来の姿を見破られ、その正体を明かし名乗る演出です。

道行物(みちゆきもの)

旅の途中のシーンや心情を描いた舞踊です。道を行く風景を描いているので「道行」といいます。主に男女の逃避行や心中へ向かう内容が多いのですが、主従の旅や、母と娘の旅を描いた作品もあります。

持ち枝(もちえだ)

手に持つ枝の小道具のことです。桜の枝や藤の枝など、歌舞伎舞踊には数多く使われます。

役(やく)

演者が演じるそれぞれの登場人物のことです。例:お軽、勘平など

役柄(やくがら)

女の役を演じる女方、男の役を演じる立役など、演者が演じる役の類型によって分類したものです。

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