歌舞伎舞踊の作品と表現

作品の一番最初の部分です。人物はまだ登場していません。幕が開いてから人物が現れるまでの間に、その場面や人物の背景や状況を説明しています。『供奴』、『越後獅子』のように「置」がない例外もあります。

『藤娘』では「若紫に十返り(とかえり)の花をあらわす松の藤波……」の部分です。若紫は藤のこと、十返りの花とは松の花の別名です。十返りとは10回繰り返すことで、松の花は100年に一度、1000年に10度咲くことから、十返りの花といわれます。全体は「松の緑と藤のあざやかな紫色が波のようにゆらゆらと揺れている」という意味です。藤の花の紫と松の緑との色彩的な美しさを示し、藤娘が登場する場所の情景を表しているのです。

『藤娘』の舞台では、この「置」の部分は、真っ暗で長唄の唄だけが聞こえ、その情景を観客の頭の中に想像させます。

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