歌舞伎舞踊の作品と表現

人形振り

『櫓のお七』5代目坂東玉三郎の八百屋お七
1986年[昭和61年]1月 国立劇場 第135回歌舞伎公演

人形振りとは登場人物が人形のような身振りで踊ることです。人物が異常なほどに興奮した状態に陥った時に用いられ、その激しい思いを人形の動作で表現するのです。江戸時代に生まれた人形浄瑠璃[人形劇]の流れを受け継いだ文楽(ぶんらく)という芸能の人形の動きを誇張しています。

文楽の人形は糸で操る人形とは違い、3人の人形遣いが1つの人形を動かしているのが特徴で、決してぎくしゃくした動きではありません。しかし、歌舞伎舞踊では人形であることを強調した振りで、女心の熱い思いをその動きの中に表します。通常の人間の思いを遥かに超えた熱い思いを表現するには、人間の通常の表現では足りません。そこで魂を入れる人形の振りを人間に取り入れたのです。『櫓のお七(やぐらのおしち)』、『奥庭狐火(おくにわきつねび)』で見られます。(※『奥庭狐火』には人形振りをしない演出もあります)

映像:『櫓のお七』

「羽がほしい 翼がほしい 飛んでゆきたい 知らせたい」という詞章で、恋人の命を救おうとする娘の切ない恋心の高ぶりを表現しています。

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