作品概要
| 通称 | 保名 |
|---|---|
| 本名題(ほんなだい) | 保名(やすな) |
| 初演年度 | 文政元年(1818年) |
| 音楽 | 清元 |
| 題材による分類 | 狂乱物・変化物 |
貴公子・安倍保名(あべのやすな)が、亡き恋人の幻を追い求めてさまよう姿を見せる作品です。とりたててストーリー展開はありませんが、清元(きよもと)の旋律が情緒を醸し出します。
保名の恋人・榊の前(さかきのまえ)は、継母に無実の罪を着せられ、身の潔白を証明するために、保名の目の前で自害しました。そのショックで保名は気がふれ、今日も春の野辺をさまよっているのです。菜の花に戯れ(たわむれ)遊ぶ番(つがい)の蝶をうらやましがったり、落ちている小袖を見つけて「榊の前がいた」と嬉しそうに駆け寄る姿が哀れを誘います。ところどころ話の筋とは関係のない詞章になり、あくまでも風情を見せるのが特徴になっています。中盤に哀しみに陥った(おちいった)後、一転して明るい曲調になります。「夜さの泊りはどこが泊りぞ 草を敷寝のひじ枕ひじ枕 ひとり明かすぞ悲しけれ」[今夜の泊まりは草を敷いて肘を枕にして寝る野宿で、1人で寝るのが悲しい]と言った内容が、リズミカルな曲に乗せて踊られます。そして「似た人あらば教えて」[似た人がいたら教えてほしい]と、形見の小袖を身に着けて、哀しみに伏し沈んでいくのでした。
