歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の演目
『本朝廿四孝』 ほんちょうにじゅうしこう
作品紹介
戦国武将の武田信玄(たけだしんげん)と上杉謙信(うえすぎけんしん)[作中では長尾謙信(ながおけんしん)]の戦いや、中国の二十四孝の故事に取材した近松半二(ちかまつはんじ)らによる「時代物」の「義太夫狂言」です。
 
互いに争っていた信玄と謙信は、将軍足利義輝(あしかがよしてる)暗殺の犯人捜査を命じられたことにより、それぞれ息子の武田勝頼(たけだかつより)と娘八重垣姫(やえがきひめ)を婚約させ、3年間休戦します。
八重垣姫が、身分を偽って謙信の館に入り込んだ武田勝頼(たけだかつより)に恋心を訴える通称「十種香(じゅしゅこう)」、謙信からの追手の存在を勝頼に知らせようとする八重垣姫に狐の霊力が乗り移り、奇跡が起こる通称「狐火(きつねび)」を中心に上演されます。
この八重垣姫は、女方の大役である「三姫(さんひめ)」の1つに数えられる役として有名です。
三姫の1つ八重垣姫 5代目中村時蔵の八重垣姫 『本朝廿四孝』「長尾謙信館十種香の場」 2005年[平成17年]3月
 
 
 
・ 『鎌倉三代記(かまくらさんだいき)』
  時姫(ときひめ)
 
> 『祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)』
  通称「金閣寺(きんかくじ)」 雪姫(ゆきひめ)
 
 
 
特徴的な表現
八重垣姫の恋心
許婚の勝頼が切腹したとの知らせを受けた八重垣姫は、勝頼の姿を描かせて掛軸にし、毎日回向をしています。「十種香」では、父謙信に召抱えられた簑作(みのさく)という勝頼の絵姿にそっくりな男が登場します。八重垣姫は、その簑作に恋心を抱き、「可愛がってたもるように」と腰元の濡衣(ぬれぎぬ)に取り持ちを頼みます。
 
八重垣姫は、赤い着付(きつけ)と打掛(うちかけ)を使用するため「赤姫(あかひめ)」という典型的な歌舞伎の姫の役ですが、大名家の姫君でありながら、勝頼に対する恋には積極的な点に特徴があります。
濡衣に仲立ちを頼む八重垣姫 7代目澤村宗十郎の濡衣 6代目尾上梅幸の八重垣姫 『本朝廿四孝』「長尾謙信館十種香の場』 1928年[昭和6年]6月 帝国劇場