歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の演目
『藤娘』 ふじむすめ
作品紹介
元々は『歌えす歌えす余波大津絵(かえすがえすおなごりおおつえ)』という5変化舞踊の一部で、大津絵に描かれたモチーフが絵から抜け出て踊るという趣向でした。昭和に入ってから舞踊を得意とした6代目尾上菊五郎(おのえきくごろう)が、藤の精が抜け出て踊るという解釈で新演出を見せ、以降この演出が一般的になっています。
女方の代表的な舞踊の1つ藤娘 5代目中村時蔵の藤の精 『藤娘』 1994年[平成6年]4月
 
 
 
特徴的な表現
6代目尾上菊五郎の新演出
幕開(まくあき)は、照明が落とされた状態で「長唄(ながうた)」の一節が歌われ、「チョン」という「柝(き)」を合図に照明が明るくなり、松の大木に絡みついた大ぶりの藤の花の前に娘姿の藤の精が立っている、という印象的なものになっています。この大きな松と藤の舞台装置も菊五郎による新演出で、体格のよい菊五郎を少しでも小さく、かわいらしい娘に見せるための工夫です。
また「長唄」の後半には、新たに作曲した「藤音頭(ふじおんど)」とよばれる曲を使用しました。「藤の花房色よく長く」ではじまるこの一節は、娘が酒に酔った様子を表す振りが見どころです。
 
> 歌舞伎の表現 音による表現 柝