歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の演目
『夏祭浪花鑑』 なつまつりなにわかがみ
作品紹介
玉島磯之丞(たましまいそのじょう)と恋人琴浦(ことうら)を守るために奔走する団七九郎兵衛(だんしちくろべえ)・お梶(おかじ)夫婦と一寸徳兵衛(いっすんとくべえ)・お辰(おたつ)夫婦を中心に描いた「世話物」の「義太夫狂言」で、夏の風情溢れる作品です。
 
通常、出獄してきた団七が徳兵衛と出会い義兄弟となる「住吉鳥居前の場(すみよしとりいまえのば)」、老侠客の三婦(さぶ)にお梶が磯之丞を預かる心意気を見せる「三婦内の場(さぶうちのば)」、団七がはずみで舅義平次(ぎへいじ)を殺してしまう「長町裏の場(ながまちうらのば)」が上演されます。
本泥を使用した「長町裏の場」の立廻り 5代目中村翫雀の団七 中村寿治郎の義平次 『夏祭浪花鑑』「長町裏の場」 2000年[平成12年]4月
 
 
 
特徴的な表現
殺し場 ころしば
歌舞伎では殺人の場面を「殺し場」とよび、音楽に合わせて「見得(みえ)」を多用する様式的な動きで表現します。「長町裏の場」では、祭りの囃子の「下座音楽(げざおんがく)」に合わせて、団七による13回程の「見得」を伴った美しい動きで表現されます。
またこの場面は、通称「泥場(どろば)」ともいわれ、池に踏み入れたときに足に本物の泥[本泥(ほんどろ)]をつけます。この泥は、舞台上で本物の水[本水(ほんみず)]を使って洗い流されます。
これは夏の季節感を出すと同時に、空調のなかった当時の芝居小屋の観客に、涼しさを感じてもらうために工夫された演出です。