歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の演目
『新版歌祭文』 しんぱんうたざいもん
作品紹介
近松半二(ちかまつはんじ)らによる「世話物」の「義太夫狂言」で、油屋の娘お染と丁稚(でっち)の久松、お光との三角関係を描いた作品です。
現在は、通称「野崎村(のざきむら)」が上演されます。久松は金を紛失した罪を着せられて、親代わりである野崎村の百姓久作の家へと戻ります。久作は娘のお光と久松を結婚させることにしますが、その祝言の当日、久松と恋仲であるお染が訪ねてきます。お光はお染に嫉妬しますが、2人が心中する覚悟だと知ると自ら尼になって身を引きます。
 
お染と久光を見送るお光 7代目澤村宗十郎のお染 4代目尾上菊三郎の油屋後家おつね 7代目市川中車の久作 15代目市村羽左衛門の久松 6代目尾上菊五郎のお光 『新版歌祭文』「野崎村の場」 1930年[昭和5年]2月 歌舞伎座
 
 
 
特徴的な表現
両花道を利用した幕切
この作品の上演時には、通常、「花道(はなみち)」の反対側の上手(かみて)に、「仮花道(かりはなみち)」が設置されます。華やかな「竹本(たけもと)」の演奏に合わせて、「本花道(ほんはなみち)[仮花道が設置された場合の通常の「花道」のよび名]」には船に乗るお染が、「仮花道」には駕篭(かご)に乗る久松がほぼ同時に引込みます。お光が2人の幸せを祈りながら見送るこの場面は、効果的に「両花道」が使用される例として有名です。