歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の演目
『花街模様薊色縫』 さともようあざみのいろぬい
通称 『十六夜清心』 いざよいせいしん
作品紹介
極楽寺の僧清心(せいしん)と遊女十六夜(いざよい)の変転を描いた河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)作の「世話物」で、通称『十六夜清心(いざよいせいしん)』とよばれています。
 
清心は、十六夜に対する女犯(にょぼん)の罪で寺を追放されます。一方の十六夜は、清心の子を身ごもったことを知り、廓(くるわ)を抜け出します。稲瀬川のほとりで出会った2人は、川に身を投げて心中します。
しかし2人とも死ぬことはできず、別々に命を永らえます。清心は、はずみで人を殺したことにより悪に目覚め、また十六夜は助けてくれた白蓮(はくれん)の妾となります。その後2人は、箱根の山中で再会し、鬼薊の清吉(おにあざみのせいきち)とおさよという盗賊となって、白蓮を強請(ゆすり)にいきます。
現在では、2人が心中をする「稲瀬川百本杭の場(いなせがわひゃっぽんぐいのば)」から、互いに一命を取りとめたことを知らずにすれ違う「百本杭川下の場(ひゃっぽんぐいかわしものば)」までが、たびたび上演されます。
「百本杭川下の場」では、殺人を犯した清心が「しかし待てよ」というせりふとともに、悪に目覚める瞬間が見どころです。
「稲瀬川百本杭の場」の十六夜と清心 6代目尾上梅幸の十六夜 15代目市村羽左衛門の清心 『花街模様薊色縫』「稲瀬川百本杭の場」[上演外題 『柳巷晴着薊色縫』] 1926年[大正15年]6月 帝国劇場
 
 
 
特徴的な表現
清元 きよもと
「稲瀬川百本杭の場」では、「清元」の名曲『梅柳中宵月(うめやなぎなかもよいつき)』が語られます。十六夜と清心の再会から心中までは、この清元の語りに合わせて、舞踊のように展開します。本来ならば絶望的な心中が、この清元によって情緒豊かで美しい場面となり、作品のみどころとなっています。