歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の演目
『恋飛脚大和往来』 こいびきゃくやまとおうらい・こいのたよりやまとおうらい
作品紹介
大坂の飛脚問屋(ひきゃくどんや)の若旦那忠兵衛(ちゅうべえ)と遊女梅川(うめがわ)の心中を描いた「世話物」の「義太夫狂言」です。
 
梅川と馴染みの忠兵衛が、友人の八右衛門(はちえもん)の挑発に乗り、梅川の身請け(みうけ)をする金として、飛脚屋で預かっていた公金の封を切ってしまう通称「封印切(ふういんきり)」や、罪人となった忠兵衛が、梅川とともに故郷の大和を訪ね、父孫右衛門(まごえもん)と再会する通称「新口村(にのくちむら)」の場面が上演されます。
「封印切」の最大の見せ場は、映像にある忠兵衛が封印を切る場面です。大勢の人がいる店先で、自分の持っている小判が偽物だと八右衛門に言われた忠兵衛は、カッとなって否定しているうちに思わず小判の封を切ってしまいます。この直後に速いテンポで演奏される「竹本(たけもと)」の三味線が、忠兵衛の後悔の念を効果的に表現しています。
 

忠兵衛が封印を切る瞬間 片岡孝夫(15代目片岡仁左衛門)の忠兵衛 5代目片岡我當の八右衛門 4代目中村雀右衛門の梅川 『恋飛脚大和往来』「新町井筒屋の場」[封印切] 1983年[昭和58年]4月
 
 
 
特徴的な表現
上方和事の表現
この作品は、おもに上方[京・大坂]で上演を重ねてきました。忠兵衛の役は、上方の「和事(わごと)」を代表する役の1つで、「二枚目(にまいめ)」の色男でありながらいくぶん滑稽に演じられるところに特徴があります。こうした忠兵衛役の特徴は、「花道(はなみち)」からの出で、自らを鎌倉時代の武将で美男子の代名詞だった梶原源太(かじわらげんだ)になぞらえて、「梶原源太は、わしかしらんて」とおどける場面によく現れています。