歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の演目
『傾城反魂香』 けいせいはんごんこう
作品紹介
近松門左衛門(ちかまつもんざえもん)の作で、江戸時代の初期に活躍した岩佐又兵衛(いわさまたべえ)という絵師の伝説などに取材した作品です。
浮世又平(うきよまたへい)の奇跡を描いた「土佐将監閑居の場(とさのしょうげんかんきょのば)」が、たびたび上演されています。
 
喋りの不自由な絵師浮世又平と妻のお徳は、「土佐」の苗字を名乗ることを許してもらうため師匠将監の家を訪れます。しかし将監は、絵師としての手柄を立てない限り、苗字は授けられないと拒絶します。絶望した又平は死を決意し、この世の名残に手水鉢(ちょうずばち)へ自画像を描いたところ、この絵が手水鉢の裏側に浮き出る奇跡が起こります。これにより又平は、めでたく「土佐」の苗字を授けられ、土佐光起(とさのみつおき)を名乗ります。
この場面は、一途な又平とそれを助けるお徳の夫婦の情愛が全編にあふれ、特に手水鉢に描いた自画像が抜け出るくだりで、最高潮を迎えます。苗字を許された後に、お徳の鼓に合わせて又平が踊る「大頭の舞(だいがしらのまい)」も見どころの1つです。
又平とお徳夫婦 6代目尾上菊五郎の又平 3代目中村梅玉のお徳 『傾城反魂香』「土佐将監閑居の場」 1939年[昭和14年]5月 歌舞伎座
 
 
 
特徴的な表現
世話女房 せわにょうぼう
お徳のように夫に尽くして、世話を焼く役柄を「世話女房」といいます。
お徳役は他の「世話女房」と異なり、喋ることが不自由な夫を常にリードしていく点に特徴があります。前半、お徳が夫に代わって、師匠に苗字を名乗ることを嘆願するせりふに、この特徴が表れています。