歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の演目
『勧進帳』 かんじんちょう
作品紹介
能の『安宅(あたか)』の影響を受けて作られた「松羽目物(まつばめもの)」の作品です。奥州平泉(ひらいずみ)へと落ち延びていく源義経(みなもとのよしつね)・弁慶(べんけい)の一行が、安宅の関を通過する際の攻防を描いています。
 
弁慶と関守富樫左衛門(とがしさえもん)による息詰まる「山伏問答(やまぶしもんどう)」、四天王を抑える弁慶と富樫との「詰寄り(つめより)」、弁慶の「延年の舞(えんねんのまい)」・「飛び六方(とびろっぽう)」など、多くの見どころがあります。
弁慶の演技には、豪快さの中にも思慮深さが求められ、また朗々としたせりふ術と舞踊の素養が必要な難役です。対する富樫は、義経一行と知りつつも関を通過させる情(じょう)を必要とします。また義経は、少ない動きの中に源氏の御曹司としての気品を求められます。
弁慶と富樫の詰寄り 9代目松本幸四郎の弁慶 7代目市川染五郎の富樫 『勧進帳』 2004年[平成16年]12月
 
7代目市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)[当時、5代目市川海老蔵(いちかわえびぞう)]が、代々の團十郎が得意とした「荒事(あらごと)」の芸を中心に制定した『歌舞伎十八番』の内の1つとして、1840年[天保11年]に初演しました。伴奏の「長唄(ながうた)」も名曲で、また演出も名優たちによって洗練されてきたこともあり、現在でも人気が高くたびたび上演されます。
 
ストーリーや関連する情報については、こちらのコンテンツをご参照ください。
文化デジタルライブラリー 演目解説『勧進帳(かんじんちょう)』
 
 
 
特徴的な表現
飛び六方 とびろっぽう
「六方(ろっぽう)」とは、歩いたり走ったりする様子を手足の動きを誇張して象徴的に表現した演出で、「六方を踏む」という表現をします。おもに「荒事」の役が、「花道(はなみち)」を引込む時に演じられます。
『勧進帳』の「幕切(まくぎれ)」の「飛び六方」は、義経一行を先に落ち延びさせた弁慶が、後を追っていく様子を象徴的に表現した演出で、弁慶役の見どころの1つです。また「飛び六方」のように、舞台に幕が引かれた後に登場人物が「花道」を引込む演出は、「幕外の引込み(まくそとのひっこみ)」とよばれ、余韻を残した「幕切」となります。