歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の演目
『奥州安達原』 おうしゅうあだちがはら
作品紹介
平安時代に起こった奥州の安倍一族(あべいちぞく)の反乱、前九年の役(ぜんくねんのえき)や安達原(あだちがはら)の鬼女伝説に取材した「時代物」の「義太夫狂言」で、立作者は近松半二(ちかまつはんじ)です。
 
戦に敗れた安倍貞任(あべのさだとう)・宗任(むねとう)兄弟とその一党による、源義家(みなもとのよしいえ)[八幡太郎義家(はちまんたろうよしいえ)]への復讐を描いた物語です。
現在では、貞任の妻で盲目の袖萩(そではぎ)とその父平{仗(たいらのけんじょう)の死、素性を偽って義家に近づき復讐を図る貞任兄弟を描いた「環宮明御殿の場(たまきのみやあきごてんのば)」[通称「袖萩祭文(そではぎさいもん)」]が上演されます。
祭文を語る袖萩 2代目中村又五郎のお君 初代澤村宗之助の袖萩 『奥州安達原』「環宮明御殿の場」 1921年[大正10年]12月 帝国劇場
 
 
 
特徴的な表現
俳優による舞台上での楽器演奏
写真は「環宮明御殿の場」で、袖萩が三味線を弾きながら祭文(さいもん)を語る場面です。不義をはたらいて勘当(かんどう)された袖萩は、流浪の最中に目が不自由となり、祭文を語ってわずかな金を得ています。袖萩が祭文に託して、両親に自分の不孝を詫びるこの場面は、「袖萩祭文(そではぎさいもん)」という通称の元となった見せ場です。
この場面のように歌舞伎には、俳優による舞台上での楽器演奏が、見せ場となる作品がいくつかあります。代表的な例としては、阿古屋(あこや)という傾城(けいせい)が琴・三味線・胡弓(こきゅう)を演奏する『壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)』の通称「阿古屋琴責(あこやことぜめ)」、盲目の女性朝顔が宿屋の客に琴唄を聞かせる『生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)』などが挙げられます。