歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の演目
『色彩間苅豆』 いろもようちょっとかりまめ
通称 『かさね』
作品紹介
通称『かさね』とよばれ、4代目鶴屋南北(つるやなんぼく)作の『法懸松成田利剣(けさかけまつなりたのりけん)』の一場面として初演された、「清元(きよもと)」の舞踊です。
登場人物は、遺書を残して出奔(しゅっぽん)した浪人の与右衛門(よえもん)とその子を身ごもった累(かさね)です。前半は、美しい2人のしっとりとした色模様をみせますが、川辺に髑髏(どくろ)が流れてきてからの後半は、うって変わって怪談風となります。この髑髏は、与右衛門がかつて累の母菊と密通したときに殺した、累の父助のものでした。この助の霊が乗り移ったことにより、累の顔は醜く変わり、片足も不自由になって与右衛門に襲い掛かります。
与右衛門は、表面上は「二枚目(にまいめ)」の色男ですが、実は女を裏切る役柄である「色悪(いろあく)」の代表的な役の1つです。
累と与右衛門が争う後半の一場面 15代目市村羽左衛門の与右衛門 6代目尾上梅幸の累 『色彩間苅豆』 「木下川堤の場」 1920年[大正9年]12月 歌舞伎座
 
 
 
特徴的な表現
連理引 れんりびき
後半で、累に襲われた与右衛門は、「花道(はなみち)」の七三[「スッポン」のあたり]まで逃げて行きます。このとき累は、見えない糸を引っ張るような独特のしぐさをし、与右衛門を「本舞台(ほんぶたい)」へと引き戻します。この累のしぐさは「連理引」とよばれ、殺されたり恨みを持ったりする女性が、裏切った男性を引き戻すときに行われます。「大ドロ」とよばれる「下座音楽(げざおんがく)」の効果音や「ツケ」の音とあいまって、怪しい雰囲気や女性の執念を表現します。