歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の演目
『妹背山婦女庭訓』 いもせやまおんなていきん
作品紹介
「時代物」[王朝物(おうちょうもの)・王代物(おうだいもの)]の「義太夫狂言」で、帝位を名乗る謀反人蘇我入鹿(そがのいるか)を倒すために、力を尽くす藤原鎌足(ふじわらのかまたり)・淡海(たんかい)親子とその一派の活躍を描いた作品です。
恋人同士でありながら、入鹿の横暴によって命を落とす久我之助(こがのすけ)と雛鳥(ひなどり)の悲劇を描いた「吉野川の場(よしのがわのば)」、求女(もとめ)という男性に恋をした橘姫(たちばなひめ)と酒屋のお三輪(おみわ)の三角関係を舞踊化した「道行恋苧環(みちゆきこいのおだまき)」、入鹿を倒すためにお三輪が犠牲となる「三笠山御殿の場(みかさやまごてんのば)」が、おもに上演されます。
 
ストーリーや関連する情報については、こちらのコンテンツをご参照ください。
文化デジタルライブラリー 演目解説『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』
 
「吉野川の場」で川を挟んで対照的に描かれた太宰家[左]と大判事家[右]
 
 
 
特徴的な表現
「吉野川の場」の対照性
この作品の立作者[合作した作者のうち、中心となった作者]、近松半二(ちかまつはんじ)[1725年〜1783年]は、江戸時代中期に活躍した人形浄瑠璃の作者で、重厚で変化に富んだストーリーの「時代物」を得意とし、多くの名作を残しました。代表的な作品は「義太夫狂言」として歌舞伎化され、現在でもたびたび上演されています。

半二の作品には、人物の身分や性格、場面の設定などを対照的に描くという共通の特徴があります。
「吉野川の場」には、この特徴がよく現れています。上の錦絵はこの場面を描いたものですが、中央に流れる吉野川をはさんで、領地をめぐる争いから互いに反目している太宰家(だざいけ)と大判事家(だいはんじけ)の館が、左右対照に配置されています。
また上手側には「仮花道(かりはなみち)」が設置され、2本の「花道(はなみち)」を吉野川の両岸に見立てて、「本花道(ほんはなみち)」[「仮花道」が設置された場合の通常の「花道」の呼称]には雛鳥の母定高(さだか)、「仮花道」には久我之助の父大判事清澄(だいはんじきよずみ)が登場し、川越しに2人がせりふのやり取りをする効果的な演出に利用されます。
 
 
 
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