歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の演目
演目の分類
歌舞伎の演目は、切り口によってさまざまな分類の仕方がありますが、ここでは代表的な2つの切り口による分類を紹介します。
 
1.作品内容による分類
時代物 じだいもの
江戸時代よりも古い時代の武士や公家(くげ)の世界を描いた作品をさします。中には『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』のように、江戸時代に起こった事件に取材した作品でも、それ以前の時代に置き換えて書かれた作品もあります。これは幕府が、戦国時代後期以降の史実の劇化を禁止していたためです。
また平安時代以前に取材した作品は、特に「王朝物」または「王代物(おうだいもの)」とよばれる場合もあります。
 
 
 
世話物 せわもの
江戸時代の町人の生活に取材した作品で、当時の現代劇をさします。特に身分の低い庶民の生活をリアルに描いたものは「生世話(きぜわ)」とよばれ、文化・文政年間[1804年〜1830年]に活躍した4代目鶴屋南北(つるやなんぼく)の作品が有名です。
 
 
 
所作事 しょさごと
舞踊のことをさします。当初は女方の専門とされてきましたが、18世紀後半から立役も踊るようになってきました。その後文化・文政年間には、いくつかの役を1人で踊り分ける「変化舞踊(へんげぶよう)」とよばれる作品が流行しました。
また題材を切り口に「獅子物(ししもの)」・「松羽目物(まつばめもの)」・「道成寺物(どうじょうじもの)」などの作品群に分類することも可能です。
 
 
 
2.作品成立の経緯による分類
義太夫狂言 ぎだゆうきょうげん
「丸本物(まるほんもの)」などともよばれ、人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)で初演され、後に歌舞伎化された作品をさします。「竹本(たけもと)」の語りによって物語が進行し、音楽的・様式的な演技や演出が多い点に特徴があります。
 
義太夫狂言の3大名作の1つ『菅原伝授手習鑑』を描いた錦絵
 
 
 
純歌舞伎
「義太夫狂言」とは対照的に、もともと歌舞伎として上演されるために書かれた作品です。4代目鶴屋南北や河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)など、狂言作者とよばれる歌舞伎専門の作者による作品が含まれます。
 
河竹黙阿弥の『三人吉三廓初買』を描いた錦絵
 
 
 
新歌舞伎
明治時代中期以降、狂言作者ではなく外部の文学者・作家によって書かれた作品のことをさします。欧米の演劇や小説の影響を受けた作品が、近代的な演技・演出に基づいて上演されました。また戦後に新たに書かれた作品は、「新作歌舞伎」として区別されるのが一般的です。
代表的な新歌舞伎の一つ岡本綺堂作『修禅寺物語』「伊豆村夜叉王住居の場」 5代目中村福助の楓 2代目市川左團次の夜叉王 1919年[大正8年]4月 歌舞伎座