歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の表現
黒衣 くろご
舞台上で俳優の補助をする役割を「後見(こうけん)」といいます。「後見」は、場面や作品によって紋付袴(もんつきはかま)や裃(かみしも)などさまざまな姿で登場しますが、顔を隠して全身黒い衣裳を身に付けている「後見」は「黒衣(くろご)」とよばれます。歌舞伎では、黒は見えないものという約束があるため、「黒衣」も舞台上では見えないことになっています。
 
「黒衣」の仕事は多岐にわたっていますが、おもに小道具を渡したり片付けたり、衣裳の着替えを手伝ったりと俳優が演技をしやすいように動きます。その性質上、舞台で目立っては演技の妨げになるため、音を立てずにすばやく出てきて、写真のように俳優の後ろや衝立(ついたて)などの舞台装置の陰に隠れ、なるべく見えないようにして仕事をします。俳優との息が合わないと舞台に支障をきたすため、多くの場合、補助される俳優の弟子が勤めます。
雪の面や海の場面などでは、黒い衣裳であるとかえって目立ってしまうため、衣裳を白や水色に変える場合もあります。この場合はそれぞれ、「雪衣(ゆきご)」、「水衣(みずご)」とよびます。
登場人物の陰に隠れる黒衣 『一谷嫩軍記』「熊谷陣屋の場」 1932年[昭和7年]2月 東京劇場