歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の表現
引抜 ひきぬき
舞台上で、衣裳を一瞬にして変える演出の1つです。衣裳をあらかじめ重ねて着込み、仕付け糸で留めておきます。直前に後見[舞台上で演技を補助する係]が、留めてある仕付け糸を抜き取り、俳優とタイミングを合わせて上に着込んだ衣裳を取り去ります。観客の目先を変える演出として、おもに舞踊で行われます。
 
映像は『京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)』の「引抜」です。演技の流れの中で、俳優と後見が息を合わせ、絶妙のタイミングで「引抜」を行っていることが分かります。
 

引抜き 7代目中村芝翫の花子 『京鹿子娘道成寺』 1990年[平成2年]3月
 
また「引抜」の中には、「ぶっ返り」とよばれる手法があります。これは衣裳の上半身の部分を糸で留め、この糸を抜くことで衣裳がパラリとめくれ、腰から下に垂れる仕掛けになっています。この演出は、登場人物が本性を現したり、性格が変わったりすることを視覚的に表現します。
 
映像は、『積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)』の「ぶっ返り」です。この場面は、本性を隠していた関守(せきもり)の関兵衛(せきべえ)が、実は天下を狙う大悪人の公家(くげ)、大伴黒主(おおとものくろぬし)であることを明かす場面です。関守の衣裳の下から、公家の衣裳が現れることにより、身分を含めた役の性格の変化が、明確に表現されています。
 

ぶっ返り 12代目市川團十郎の関兵衛実は大伴黒主 『積恋雪関扉』「逢坂山関所の場」 1991年[平成3年]1月
 
 
 
 
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