歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の表現
家の芸
それぞれの俳優の家に代々伝わったり、あるいは俳優個人が得意としたりした演技・演目・役を「家の芸」とよびます。
代表としては、幕末に7代目市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)[当時、5代目市川海老蔵(いちかわえびぞう)]が、代々の團十郎が得意とした「荒事(あらごと)」の役をまとめた「歌舞伎十八番」が挙げられます。
 
「歌舞伎十八番」『勧進帳』の弁慶を演じる7代目市川團十郎[当時5代目市川海老蔵]
 
明治以降には、この「歌舞伎十八番」に影響を受け、さまざまな俳優が「家の芸」をまとめ始めます。おもなものに9代目市川團十郎が制定した「新歌舞伎十八番」、5代目尾上菊五郎(おのえきくごろう)が制定した「新古演劇十種(しんこえんげきじっしゅ)」[後に6代目菊五郎が1種を追加]などが有名です。これらに含まれている役々のうちの一部は、現在の12代目市川團十郎や7代目尾上菊五郎によって演じられています。
「歌舞伎十八番」のように演目が制定されてまとめられたものとは別に、それぞれの家が得意としてきた「芸風」ともいえる「家の芸」も存在します。例えば、尾上菊五郎家(おのえきくごろうけ)の「世話物(せわもの)」や怪談劇、明治以降の中村歌右衛門家(なかむらうたえもんけ)の女方の大役、澤村宗十郎家(さわむらそうじゅろうけ)の「和事(わごと)」などが挙げられます。