
歌舞伎の場面の表現は、大道具、小道具、「下座音楽(げざおんがく)」とよばれる効果音、舞台機構などが駆使されています。ここではどのような工夫によって、その場面の情景が表現されているか、そのポイントを概説します。
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大道具・小道具・「下座音楽」などを組み合わせて、総合的に「場面らしさ」を表現する例として、雪の場面を取り上げます。
映像は、『奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)』「環宮明御殿の場(たまきのみやあきごてんのば)」です。雪の中を眼の不自由な袖萩という女性が、娘に手を引かれながら絶縁状態にある両親のもとを訪れる場面です。
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![]() ![]() < RealPlayer : 3.4MB >
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舞台の上部に吊られた籠[雪籠(ゆきかご)]から、四角く切った白い和紙を降らせます。雪籠には、舞台の袖まで伸びる長いひもがつけられています。このひもを引いて籠をゆらすことで雪を降らせ、ゆらし方で降らせるタイミングや量を調整します。同じ仕掛けを利用して、『祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)』[通称「金閣寺(きんかくじ)」]のように、桜の花びらを降らせることもあります。
> 代表的な演目 『祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)』 |

地面や床を表すために舞台に敷く布を「地絣(じがすり)」といいます。屋外の場面では、通常は鼠色や褐色のものを使用しますが、雪の場面では「雪布」という白い「地絣」を敷くことで、雪の積もった状態を表現します。

現実には雪が降るときに音はしませんが、歌舞伎では大太鼓を使った「雪音」で、象徴的に表現します。「雪音」は、先の部分を布や綿で包んだ撥(ばち)で、大太鼓を軽くたたいた「ドンドン」という柔らかい音です。映像にもあるように、風が強く吹きつけるときなどは、反対側の手で長撥(ながばち)を持ち、太鼓の表面にあてて押さえることにより、より強い音を出して表現します。