歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の舞台
セリ
舞台の床の一部をくりぬき、その部分を上下に動かすことができる舞台機構をいいます。
 
現在の歌舞伎の劇場では、大小さまざまの「セリ」がありますが、写真のように大道具全体を上下させる大きな「セリ」を「大ゼリ(おおぜり)」、登場人物を上下させる小さな「セリ」を「小ゼリ(こぜり)」、「花道(はなみち)」の付け根近くにある「セリ」を「スッポン」とよびます。
特に「大ゼリ」は、ダイナミックな舞台転換に使用されます。写真は、『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』の「極楽寺山門の場(ごくらくじさんもんのば)」を撮影したものです。最初は2階部分しか見えていなかった山門の大道具が、「大ゼリ」でせり上げられることにより、1階部分が現れます。このとき同時に舞台上部から下がっている桜の枝[「吊り枝(つりえだ)」]も少し引き上げられて短くなり、霞が描かれた大道具も取り除かれることで、舞台転換をさらに効果的にしています。
セリ
 
せり上がる前 17代目市村羽左衛門の日本駄右衛門 『青砥稿花紅彩画』「極楽寺山門の場」 1984年[昭和59年]3月 せり上がった後 17代目市村羽左衛門の日本駄右衛門 3代目河原崎権十郎の青砥左衛門 『青砥稿花紅彩画』「滑川土橋の場」 1984年[昭和59年]3月
 
歌舞伎では、1753年[宝暦3年]に狂言作者(きょうげんさくしゃ)の並木正三(なみきしょうざ)の工夫によって使用されたのが、最初だとされています。現在では電動ですが、江戸時代には人力で動かされていました。
 
 
 
> 『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』「床下の場(ゆかしたのば)」
  御殿全体がせり上がり、床下の場面となります。
 
> 『祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)』
  [通称『金閣寺(きんかくじ)』]
  金閣寺の建物がせり下がり、場面は1階から2階へと展開します。
 
・  『楼門五三桐(さんもんごさんのきり)』「南禅寺山門の場(なんぜんじさんもんのば)」
  『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』「極楽寺山門の場(ごくらくじさんもんのば)」のモデルとなった作品で、同様に山門の2階がせり上がり、1階部分が現れます。