歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎の歴史
河竹黙阿弥の活躍 〜幕末から明治へ〜
猿若町時代に最も活躍した俳優として、4代目市川小團次(いちかわこだんじ)を挙げることができます。小團次は名門の出身でないにもかかわらず、実力で「座頭(ざがしら)」[一座のトップ]となった異色の俳優です。小柄で容姿に恵まれなかったこともあり、舞踊や「ケレン」といわれる特殊演出を得意とし、写実的でリアルな芸風を売りにしました。
 
黙阿弥作『三人吉三廓初買』の4代目市川小團次[中央]
 
この小團次の芸風に合わせた作品を多く提供したのが、幕末から明治にかけて活躍した作者の河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)です。
黙阿弥は、泥棒が登場する「白浪物(しらなみもの)」とよばれる作品を得意とし、江戸の庶民生活をリアルに描きながらも、七五調のせりふや清元(きよもと)などの音楽を効果的に織り込んだ優れた作品を多く残しました。明治時代にも引き続き活躍した黙阿弥は、9代目市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)、5代目尾上菊五郎(おのえきくごろう)、初代市川左團次(いちかわさだんじ)などに作品を提供しました。その作品群は、現在の歌舞伎のレパートリーにおいて大きな割合を占めています。
代表作としては、小團次が主演した『三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)』、菊五郎の出世作となった『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』[通称『白浪五人男(しらなみごにんおとこ)』]、明治に入ってから江戸風俗を書き残した『天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)』、舞踊劇の『土蜘(つちぐも)』などが挙げられます。
 
 
 
 
 
 
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