歌舞伎への誘い 〜鑑賞の手引き〜
歌舞伎とは
1.「間口」の広い芸能 2.「らしさ」を追及した芸能
 
1.「間口」の広い芸能
歌舞伎は、能楽(のうがく)や文楽(ぶんらく)とともに、わが国を代表する伝統芸能の1つです。
 
歌舞伎の由来
「歌舞伎」という芸能名の由来は、「傾く(かぶく)」という動詞にあります。この動詞には、並外れている、常軌を逸しているという意味があります。
安土桃山時代から江戸時代初期にかけて、当時の流行の最先端を行く奇抜な服装や髪型をし、世間の秩序に反して行動する人々は、「かぶき者」とよばれました。歌舞伎の歴史は、出雲の阿国(いずものおくに)の「かぶき踊り」にまでさかのぼることができますが、このよび名は当時を象徴する最先端の「かぶき者」の扮装を舞台上でまねたことによります。ここから、「かぶき」とよばれるようになったのです。
歌舞伎は、この発祥時の精神を受け継ぎ、約400年の歴史の中で、さまざまな時代の困難を乗り越えながら、他の芸能やそのときどきの流行などを貪欲(どんよく)に取り入れ、たくましくまた柔軟に発展してきました。その結果、歌舞伎は、演劇・舞踊・音楽の各要素を備えた「総合芸術」として現在に受け継がれています。
 
 
 
 
 
 
多様な歌舞伎の演目
このような経緯から、上演作品は、一口に歌舞伎の作品といっても、その成り立ちと内容はバラエティーに富んでいます。
現在、上演される歌舞伎の作品数は、およそ400本といわれています。この中には、歌舞伎が他の芸能から取り入れた作品も多く存在します。これらの作品のうち、最も数が多いのは、人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)の作品を歌舞伎化した「義太夫狂言(ぎだゆうきょうげん)」です。また歌舞伎のためにかかれた作品の中にも、能や狂言に取材した「松羽目物(まつばめもの)」とよばれる舞踊作品や、落語や講談、当時の流行小説を取り入れた作品が存在します。
また歌舞伎の作品は、その内容から大きく「時代物(じだいもの)」と「世話物(せわもの)」に分類できます。「時代物」は、「軍記物(ぐんきもの)」とよばれる合戦を描いた物語や、各地に伝わるさまざまな伝説などから着想して作られました。一方、江戸時代の町人の世界を描いた「世話物」は、おもに当時起こった殺人・心中・強盗などの事件を脚色して作られました。
そしてこれらの多様な作品の内容を「それらしく」表現するため、さまざまな演技や演出が工夫されていきました。
 
バラエティーに富んだ歌舞伎の作品
 
 
 
「間口」の広い芸能
歌舞伎の作品や演技・演出の多様性は、観客の立場から見れば「間口」、つまり「入り口」の広さに通じます。観客が興味を持つための「きっかけ」が、多く存在するということです。一般的に歌舞伎とは、「現代人が分からない言葉で演じられている」とイメージしがちですが、それは多様な作品の中の一部に過ぎません。さまざまな作品に触れることで、歌舞伎の新しい一面を見つけられるはずです。
 
 
 
 
 
 
2.「らしさ」を追及した芸能へ