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1人の能役者が、あるときはシテを演じ、別の日にはワキを演ずるということはありません。いつもは小鼓を担当している人が、臨時で笛を演奏するということもありません。能役者の仕事は厳密な分業制になっており、他の領域を侵すことはないのです。ある役者がどの専門を担当しているかを示すのが役籍(やくせき)です。
シテやツレを演じ、地謡を担当する人々の役籍は「シテ方」です。ほかに、ワキ方、狂言方、笛方、小鼓方、大鼓方、太鼓方と、合計7つの役籍があります。各役籍は、さらに複数の流派に分かれています。同じ役籍の中で、たとえば観世流のシテと金春流のツレが共演するということは、原則としてありませんが、役籍が違えば、すべての流派がどの流派とも組むことができます。つまり、理論的には、流派の組み合わせは5×3×3×4×5×2×2通りが可能だということです。
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