文楽編 仮名手本忠臣蔵 Kanadehon Chushingura

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テーマと3つの死

些細な行き違いの重なりから、予想もしなかった運命にまきこまれていく人々とその家族や恋人たち。本作では、さまざまなエピソードとともに、人間の生き方の真実を描き出すドラマが展開します。判官、勘平、本蔵3人の死を読み解いてみましょう。

塩谷判官の死

高師直(こうのもろのう)は、加古川本蔵(かこがわほんぞう)からの賄賂を受け取ったことで、桃井若狭之助(もものいわかさのすけ)に卑屈に詫びなければなりませんでした。不快感はつのるばかりです。その時、師直が言い寄る判官の妻・顔世御前(かおよごぜん)からの拒絶の返歌が、ほかでもない塩谷判官(えんやはんがん)から手渡されました。以前の不快感に加えて、屈辱感と嫉妬が、判官に対する侮辱的な言葉となって浴びせられました。判官は、侮辱の原因もわからず刃傷に及びます。ちょっとした感情のもつれが、判官の殿中刃傷と切腹という重大な事態をひきおこしたのです。

早野勘平の死

判官が殿中で刃傷事件を起こした時、供として側に仕えていなければならない早野勘平(はやのかんぺい)は、恋人・おかるとの逢瀬に夢中になっていました。判官は切腹となり、勘平の運命が狂いはじめます。若気の過ちによって失ってしまった侍としての名誉を挽回をすること以外、勘平の眼中にはありません。瀕死の旅人から金を奪い、舅殺しを隠しても敵討ちの晴れの場に立ちたいという強い思い。勘平の死は、単なる運命のいたずらではなく、主従関係や名誉に執着する利己心から生じた自滅といえるかもしれません。

加古川本蔵の死

本蔵は、主君と家を守るためとはいえ、師直へ賄賂を贈ったことを恥じていました。師直に斬りかかった判官をとっさの判断で抱きとめ、判官に無念の切腹を遂げさせてしまったことに心を痛めてもいました。その恥や痛みは本蔵に変化をもたらします。本蔵は、主君への忠義より、娘の想いをとげさせてやるために命を捨てるという、武士の倫理としてはありえない行為を選び取ったのです。

本蔵は、大星由良助(おおぼしゆらのすけ)が成し遂げるであろう偉業も、主君の短慮の後始末でしかない虚しさを知っています。虚しい役目に命をかける由良助の無念もわかっています。一方、由良助も、主君判官が恨みを抱いたであろう人物、自分とは相容れない生き方をしてきた本蔵を、許し受け容れました。

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