文楽編 仮名手本忠臣蔵 Kanadehon Chushingura

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六段目 早野勘平腹切の段(はやのかんぺいはらきりのだん)

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自分が撃った男はおかるの父親だったのではという勘平の不安は、死骸が運び込まれたことで、もはや確信となってしまいました。おかるの母親と昔の仲間に責められ、絶望して死を選ぶことしかできない勘平でしたが、真相は……


猟師仲間が、与市兵衛(よいちべえ)の死骸を運んで来ました。老母は、嘆きのうちにも、舅(しゅうと)の死に驚かない早野勘平(はやのかんぺい)の様子を不審に思います。老母は、一文字屋が自分の着物のはぎれで作った財布を与市兵衛に貸したといった時の、勘平のわずかな動揺を見逃しませんでした。ついに老母は、勘平の懐から血のついた縞の財布をつかみ出し責めたてます。悔やんでかえらぬ過ちに、非難を受けるほかない勘平です。

そこへ、原郷右衛門(はらごうえもん)と千崎弥五郎(せんざきやごろう)が訪れ、勘平が帰参の望みをかけて託した金は差し戻されました。大星由良助(おおぼしゆらのすけ)の考えです。老母が、その金は、勘平が舅を殺して奪ったものと訴えました。2人から、武士にあるまじき行い、亡君の恥と責められた勘平は、脇差しを腹に突き立てました。勘平は涙ながらに昨夜の出来事を語り、何をしても思い通りにならない無念さを嘆きます。

弥五郎が、与市兵衛の死骸を検証すると、死因は鉄砲傷ではなく刀傷です。郷右衛門は、道すがら撃たれて死んでいた斧定九郎(おのさだくろう)の死骸に思い当りました。勘平は、図らずも舅の敵を討っていたのです。汚名は晴れました。しかし、勘平の最期が近づきます。郷右衛門は勘平を連判状(れんぱんじょう)に加え血判(けっぱん)を押させます。勘平は「成仏などせず、敵討ちの供をする」と息をひきとりました。

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腹を切った勘平の言訳

コラム 歌舞伎の勘平 ― 運命にもてあそばれた悲劇の美男

『仮名手本忠臣蔵』道行旅路の花聟(戸塚山中)

歌舞伎の早野勘平は、二枚目の役どころです。浄瑠璃の三段目「裏門の段」は、歌舞伎では清元舞踊「落人(おちうど):道行旅路の花聟(みちゆきたびじのはなむこ)」として演じられることが多く、黒紋付き姿の勘平が腰元・お軽(おかる)と、富士を背景とした美しい舞台をゆく道行となっています。「五段目」は、浄瑠璃詞章を省略したパントマイム劇で、暗闇で獲物を探って縄をさばく様子が、洗練された型となっています。そして、「六段目」では、勘平は、苦悶(くもん)する美男の典型として、取り返しのつかない悲劇の主人公となるのです。腹を切ってからの「色に耽(ふけ)ったばっかりに」との自嘲と、血の手形を頬につける演出などは、特に鮮烈な印象を残します。

歌舞伎役者の名跡・尾上菊五郎(おのえきくごろう)家には、3代目に発し5代目が集大成した、菊五郎型の詳細な手順が伝承され、すみずみまで江戸風に洗練されています。美男で愛すべき勘平が、運命のいたずらから舅(しゅうと)を殺したと思い込み命を果たす哀れ…歌舞伎の「六段目」はそのように書き換えられたといえるでしょう。

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